「教育関係者のための著作権入門」

須曽野 仁志  

三重大学教育学部附属教育実践総合センター


著作権とは何か

 知的所有権は、工業所有権と著作権の2つに分けられる。

 工業所有権は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権といった発明やアイデアなどを対象とする。そして、もう1つが、文化的な創作物を保護の対象とする著作権であり、これは著作権法という法律で保護される。

 文化的な創作物-----人間の思想、感情を創作的に表現したもの
          (表現したものを「著作物」といい、それを創作した人が「著作者」という)
           文芸、学術、美術、音楽などの範囲に入る(→「著作権の種類」)

権利の発生

・工業所有権----登録しなければ権利が発生しない

・著作権-------著作物を創作した時点で自動的に権利が発生。権利を得るための手続きは不必要。以後、著作者の死後50年まで保護される。


著作物の種類

著作物の種類

言語 小説、脚本、論文、講演、短歌、俳句など
音楽 楽曲、楽曲を伴う歌詞
舞踊、無言劇 舞踊、バレエ、ダンスなどの舞踊、パントマイムの振り付け
美術 絵画、版画、彫刻、漫画、書など (美術工芸品を含む)
建築 建造物自体
地図、図形 地図と学術的な図面、図表、模型など (建築設計図は図形の著作物)
映画 劇場用映画、テレビ映画、ビデオソフトなど  (映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含む)
写真 写真、グラビアなど
プログラム コンピュータプログラム

上記以外の著作物

二次的著作物 上表の著作物(原著作物)を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物
編集著作物 編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するもの。例えば、百科事典、辞書、新聞、雑誌、詩集などの編集物。
データベースの著作物 論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの

法律上、著作権がないとされるもの

(著作権法 第13条)

(1) 憲法 その他の法令(地方公共団体の条例を含む)
(2) 国又は地方公共団体の機関が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
(3) 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行なわれるもの
(4) (1)〜(3)に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国又は地方公共団体の機関が作成するもの


著作者の権利

「人格的な権利」と「財産的な権利」

著作者人格権------人格的な利益を保護する

 著作者だけが持っている権利で、譲渡したり、相続したりすることはできない(一身専属権)。この権利は著作者の死亡によって消滅するが、著作者の死後においても、著作者人格権の侵害となるような行為(例えば、内容やタイトルの改変など)をしてはならない。

著作者人格権
公表権 著作者は、その著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、又は提示する権利を有する。(第18条)
氏名表示権 著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しく
は提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。(第19条)
同一性保持権 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その
意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。(第20条)

著作(財産)権----財産的な利益を保護する

 一方、財産的な著作権は、その一部又は全部を譲渡したり相続することができる。その場合の著作権者は著作者ではなく、著作権を譲り受けたり、相続したりした人ということになる。

著作権
複製権 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。(第21条)  (印刷、写真、複写、録音、録画などの方法によって著作物の複製物をつくる権利。)
上演権・演奏権 公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利。(第22条)
公衆送信権など 著作物を公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行う権利。また、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利。(第23条) 
口述権 朗読などの方法で著作物を公に口述する権利。(24条)
展示権 美術の著作物または未発行の写真を公に展示する権利。(25条)
上映権・頒布権 映画の著作物を公に上映したり、また、その複製物により頒布する権利。(26条)
貸与権 著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を
除く。)の貸与により公衆に提供する権利。(27条)
翻訳権・翻案権など 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利(二次的著作物を創作することに及ぶ権利)。 (28条)
二次的著作物の利用権 二次的著作物については、二次的著作物の著作者だけでなく、原著作者も上記の諸権利を持つ。(29条)


著作権の保護期間

我が国での著作物の保護期間

 著作権の原則的保護期間は、著作者が著作物を創作した時点から著作者の死後50年までとなっている

著作物の種類 保護期間
実名(ペンネームなどの「周知の変名」を含む)の著作物 死後50年
無名・変名の著作物 公表後50年
団体名義の著作物 公表後50年
映画の著作物 公表後50年

(注) 著作権保護期間の計算は、期間計算を簡便にするため、死亡、公表、創作した年の翌年の1月1日から起算される。なお、保護期間中でもその著作権者の相続人がいないときは著作権は消滅する。

・手塚 治虫(1989年2月9日死去)作品の著作権について

死去した翌年の1990(平成2)年1月1日から起算して2039(平成51)年12月末日までが、著作権の保護期間となる。

・太宰 治(1948年6月死去)作品の著作権について

死去した翌年の1949(昭和24)年1月1日から起算して1998(平成10)年12月末日までが、著作権の保護期間であった。

外国の著作物の使用

 外国の著作物を使用する場合には、わが国の著作物に与えられている保護と同様の保護を与えるのが原則である。ただし、保護期間などに関しては例外がある。

・保護期間の相互主義----我が国より保護期間が短い国の著作物は、その相手国の保護期間だけ保護される。

・保護期間の戦時加算----第2次世界大戦の平和条約において、条約関係にある連合国の国民が第2次世界大戦前または大戦中に取得した著作権については、通常の保護期間に戦争期間を加算する。戦争期間は、1941年12月8日から、対日平和条約発効の前日までの日数となる(戦争終結の1945年8月15日ではない)。主な国は3794日を加算する。

著作権の原則的保護期間が死後50年ではない主な国

コロンビア、ギニア、パナマ(死後80年)
オーストリア、ドイツ、イスラエル(死後70年)
ブラジル(死後60年)
チリ(死後30年)
キューバ(死後25年)

ラベル(フランスの作曲家、主な作品「ボレロ」「ダフニスとクロエ」など、1937年死去)

死去した翌年の1938年1月1日から起算して1987年12月末日、さらにフランスの場合、3794日を加算して、1998年途中までが、著作権の保護期間であった。


著作隣接権とは何か

著作隣接権--------著作物の伝達に重要な役割を果たしている実演家(俳優、舞踊家、歌手、演奏家、指揮者、演出家など実演を行う者)、レコード製作者(レコードに固定されている音を最初に固定した者)、放送事業者(放送を業として行う者。NHK、民間放送各社、放送大学学園など)、有線放送事業者(有線放送を業として行う者。CATV、音楽有線放送事業者など)に認められた権利

権利の種類

実演家

レコード制作者

放送事業者・有線放送事業者

録音権・録画権 自分の実演を録音・録画する権利。 レコードを複製する権利。
放送権・有線放送権 自分の実演を放送・有線放送する権利。
送信可能化権 実演を送信可能化する権利。例えば、インターネットのホームページなどを用いて、公衆からの求めに応じて自動的に送信できるようにする権利。
商業用レコードの二次使用料を受ける権利 商業用レコードが放送で使用された場合の使用料(二次使用料)を、放送事業者から受け取る権利。
貸与権など 商業用レコードを貸与する権利(最初に販売された日から1年に限る)。1年を経過した商業用レコードが貸与された場合には、貸レコード業者から報酬を受ける権利。
複製権 放送(に係る音又は影像)を録音し、録画し、又は写真その他これに類似する方法により複製する権利
再放送権・有線放送権 放送を受信して再放送したり、有線放送したりする権利。
テレビジョン放送の伝達権 テレビジョン放送を受信し、影像を拡大する特別の装置(超大型テレビ、ビデオプロジェクタなど)を用いてその放送を公に伝達する権利

著作隣接権の保護期間     *それぞれ翌年の1月1日から起算。

実演 実演が行われたときから50年
レコード 音を最初に固定したときから50年
放送又は有線放送 放送又は有線放送が行われたときから50年


著作物が自由に使える場合

 著作権法では、一定の場合(私的使用、学校教育、に、著作権を制限し、他者が著作権者の許諾を得ることなく、著作物を自由に利用することができるようにしています。しかし、著作権者の利益を不当に害したり、また著作物の通常の利用が妨げられないように、その条件が厳密に定められている。

 また、著作権が制限される場合でも、著作者人格権は制限されない。内容やタイトルを勝手に変えたりすることなどは許されない。

自由に使える場合

私的使用のための複製 個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において、著作物を複製して使用すること。ただし、デジタル方式の録音・録画機器等を用いて著作物を複製する場合には、著作権者に対し補償金の支払いが必要。(30条)
図書館などでの複製 図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館等、法律で定められた図書館に限り、利用者に対し複製物の提供などを行うことができる。(31条)
引用 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。(32条)  注) 引用される部分が「従」で自ら作成する著作物が「主」であること、引用部分を明示し、かつ著作者名、題名などを明らかにする出所の明示をしなければならない。
教科書への掲載 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書に掲載することができる。ただし、著作者への通知と著作権者への一定の補償金の支払いが必要。(33条)
学校教育番組の放送など 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、学校教育に関する法令の定める教育課程の基準に準拠した学校向けの放送番組において放送し、及び当該放送番組用の教材に掲載することができる。ただし、著作者への通知と著作権者への補償金の支払いが必要。(34条)
学校における複製 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、著作権者の利益を不当に害することとなる場合を除く。(35条)
試験問題としての複製 公表された著作物は、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題として複製することができるただし、営利目的のための利用は、著作権者への補償金の支払いが必要。(36条)
点字による複製など 公表された著作物は、盲人用の点字により複製することができる。また、点字図書館その他の盲人の福祉の増進を目的とする施設では、盲人向けの貸し出し用として著作物を録音することができる。(37条)
営利を目的としない上演など 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、口述し、又は上映することができる。ただし、当該上演、演奏、口述又は上映について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。(38条)
時事問題の論説の転載など 新聞、雑誌に掲載された時事問題に関する論説は、転載禁止の表示がなければ、ほかの新聞、雑誌に掲載したり、放送したりできる。(39条)
政治上の演説などの利用 公開して行なわれた政治上の演説や陳述、裁判での公開の陳述は、ある一人の著作者のものを編集して利用する場合を除き利用できる。(40条)
時事事件の報道のための利用 時事の事件を報道する場合には、写真、映画、放送その他の方法によつて、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。(41条)
裁判手続などにおける複製 著作物は、裁判手続のために必要と認められる場合及び立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、複製することができる。(42条)
翻訳、翻案等による利用 (43条)
放送などのための一時的固定 放送事業者などは、放送のための技術的手段として、著作物を一時的に録音し、又は録画することができる。(44条)
美術の著作物などの所有者による展示 美術の著作物又は写真の著作物などの原作品の所有者は、その作品を展示できる。(45条)
公開の美術の著作物などの利用 美術、建築の著作物(例えば、公園にある銅像など)は、写真撮影したり、テレビ放送したりすることができる。(46条)
美術の著作物などの展示に伴う複製 美術・写真の著作物を公に展示する者(開催者)は、観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載することができる。(47条)
プログラムの著作物の複製物の所有者による複製など プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。(47条)


著作物の正しい使い方

 著作物を利用する場合、上述した「自由に著作物を使用できる」場合を除いて、原則として著作権者の許諾を得る必要がある。著作物の利用にあたっては、できるだけ利用の仕方を詳しく説明したうえで、文書で、その利用の仕方、許諾の範囲、使用料の額と支払い方法などを確認しておくのが望ましい。

著作権利用の問い合わせ先

種類 団体名 連絡先(URL)
著作権全般 著作権情報センター http://www.cric.or.jp
所管官庁 文化庁文化部著作権課 http://www.bunka.go.jp
音楽 日本音楽著作権協会(JASRAC) http://www.jasrac.or.jp
小説 など 日本文芸著作権保護同盟
脚本 日本脚本家連盟
日本シナリオ作家協会
美術 日本美術家連盟
書籍出版 日本書籍出版協会 http://www.jbpa.or.jp/
実演 日本芸能実演家団体協議会 http://www.geidankyo.or.jp
レコード 日本レコード協会 http://riaj.japan-music.or.jp/
放送 日本放送協会(NHK) http://www.nhk.or.jp
日本民間放送連盟
ビデオ 日本映像ソフト協会 http://www.jva-net.or.jp
写真 全日本写真著作者同盟
個人録音 私的録音補償金管理協会
複写 日本複写権センター
コンピュータソフトウェア コンピュータソフトウェア著作権協会

権利の侵害

 著作権のある著作物を著作権者の許諾を得ないで無断で利用すれば、著作権の侵害となる。ただし、許諾なく使える場合には、無断で利用しても著作権侵害とならない。

 また、著作者に無断で、著作物の内容やタイトルを改変したり、著作物に勝手に本名(著作者が変名や匿名を希望している場合)をつけて発行したりすれば、著作者人格権の侵害となる。

 さらに、違法に複製された著作物を頒布(販売・貸与など)したり、頒布の目的で所持する行為なども権利侵害となる。

 著作権侵害は犯罪となり、侵害者を処罰してもらうことができるが、被害者が告訴しなければ処罰されない(親告罪)。罰則は、著作権侵害、著作者人格権侵害ともに3年以下の懲役又は300万円以下の罰金と規定されている。


本ページを作成するにあたり、財団法人著作権情報センターが作成するホームページ「はじめての著作権講座」(http://www.cric.or.jp/hajime/contents.html)と、玉川大学視聴覚センターメディア教育推進室が作成した「著作権勉強会資料(PDFファイル)」(http://www.tamagawa.ac.jp/sisetu/avc/copyright/990628.pdf)を参考にさせていただきました。