(1) デジタルストーリーテリングって何?
デジタルストーリーテリングって、これまで聞いたことがありますか? 何か、長ったらしい言葉で、カタカナのコンピュータ用語が苦手な人には、難しく思えるかもしれません。
ストーリーテリングとは、現実に起こったことや空想上のことを、「お話」として「語る」「伝える」ものです。
例えば、「ももたろう」や「うらしまたろう」の昔話を思い出してみましょう。幼かった頃、おうちの方や幼稚園の先生から「むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが、、、」と、話をしてもらったことを、今でも覚えている人は多いでしょう。昔話の読み聞かせは、ストーリーテリングの1つです。
次に、大勢の人がいるホールや教室で、話を聴くことを思い浮かべてください。講演会や大学のように、講演者や教授が何も使わず口頭で話し続けると「眠くなる」と感じたことはありませんか? きっと、そんなことを体験した人は多いと思います。話が単調になったり、講師が一方的に延々と話し続けると、眠気を誘いますね。聴いてくださっている人(オーディエンス)に、何かを伝えたいとき、口頭で話し続けるより、写真や絵などを使って伝えた方が、聴いている方にとって、「わかりやすい」「なるほど」と思うことがよくあります。
「ももたろう」や「うらしまたろう」の昔話の例では、子どもたちを対象に、紙芝居や絵本を使った方が、目を輝かせて話を聴いたり、話の内容に興味を持つ子どもが多いはずです。2つめの講義や講演会などでは、最近、パワーポイントなどのプレゼン資料を使って話をする人が増えてきましたが、多くの人を対象に話をするときには「工夫」が大切なのです。
現在、コンピュータを用いて、撮影したデジカメ画像、古い写真、自分自身で描いた絵などを、自分のナレーション録音でつなげて制作するデジタルストーリーテリングが注目されています。いま、欧米で特に注目させているストーリーテリングは、2分から5分程度の短い作品で、コンピュータを用いて、「話を語る」「物語る(ものがたる)」という活動が盛んになっています。
==デジタルストーリーテリングの定義==
デジタルストーリー(Digital Story)とは、制作者がコンピュータなどのデジタル機器を利用し、画像(デジカメ画像、スキャナで取り込んだ写真や絵、マウスで書いた画像など)を、制作者自身が録音した語り(ナレーション、英語では「語り」はnarrative)でつなげていく「お話」である。そのストーリーを制作・発表することを、デジタルストーリーテリング(Digital
Storytelling)という。
作品制作の中では、作品を盛り上げるために、音楽(BGM)を挿入したり、録音音声と共に(または音声の代わりに)、字幕を付けることがある。また、写真や絵などの画像だけでなく、動画が使われることがあるが、主に使われるのは静止画であり、作品で使われる静止画の数は、数枚から、数十枚に及ぶ場合がある。デジタルストーリーの作品時間は、2〜4分程度とされ、学習者の表現・発表活動を重視する欧米の大学・学校では、デジタルストーリーテリングを授業に取り入れる教師・教育関係者が増えている。コンピュータを用いた制作では「Windows ムービーメーカー」や「Macintosh iMovie」などの動画編集ソフトウェアが利用される。
具体的に、コンピュータでどんなふうに作るか、少し説明していきましょう。
デジタルストーリーを制作するには、「Windows ムービーメーカー」(Windows XP or Vista)や「iMovie」(Macintosh)のような動画編集ソフトウェアを利用します。動画編集ソフトには、Adobe
Premier、Cyberlink Power Directorのような市販されているものがありますが、Windows ムービーメーカーのように、コンピュータの基本ソフトウェア(OS)に付随していたり、無料でダウンロードできるソフトが利用できます。
図1はWindows ムービーメーカーの画面です。Windows ムービーメーカーは、録画しておいた動画(ムービークリップ)や静止画などを使って、ムービーを作るソフトですが、デジタルストーリーテリングでは、基本的に写真や絵などの静止画を用いて、2〜4分程度の作品を作っていきます。用意しておいた静止画を順に並べ、録音しておいたナレーションなどの音声ファイルといっしょに、下のタイムライン(図下)に流し込み、お話を作っていきます。
このような作業をするには、制作者はどのようなストーリーにするかを考え、シナリオを作らなければなりません。さらに、デジカメの画像や自分で描いた絵などを用意したり、自分の声でナレーションをコンピュータを使って録音することが必要になります。
数分程度では、画像、ナレーション、音楽などを効果的に使うことが重要となります。
デジタルストーリーテリングを、日本語に置き換えてみると、「デジタル紙芝居」という言い方がぴったりで、わかりやすいかと思います。